ART DESCRIPTION
2006年、バリーは実に独創的で内省深い「イズ・イズ・イット(IS IS IT)」シリーズに着手した。この作品群は、並外れた肖像画への深く実存的な探求であり、その革新的で大胆なアプローチが際立っている。 構図は、1824年に設立され、13世紀半ばから1900年までの作品2,300点以上を所蔵している英国国立美術館ナショナル・ギャラリー(National Gallery)によく訪れて観ていた、ヴェネツィア派の第一世代を代表する画家でイタリアルネサンス期の画家ジョヴァンニ・ベッリーニ(Giovanni Bellini, 1430年頃 - 1516年)の1501年から1521年までヴェネツィアの総督 (ドージェ)であった『レオナルド・ロレダンの肖像』(The Portrait of Doge Leonardo Loredan)に基づいている。この作品には、この頃からサインとして機能し始めた円形の絆創膏のモチーフが描かれている。
伝統的な肖像画に見られる構え、力強さ、華やかさは、儀式への賛美であり、彼はここで、これらの肖像画のスタイルを、彼ら独自のスタイル(バッファローで流行し始めたもの)のテイストを入れて再構成し始める。後にこのテーマは、ニューヨーク在住の肖像画家で、権力、富、怒り、ユーモアを表現してバラク・オバマ元大統領の公式肖像画を描き、世界的な知名度を得たケヒンデ・ワイリー(Kehinde Wiley、1977年2月28日- )や、アフリカ系アメリカ人の被写体をカラフルな単色や日常的なシーンを背景に描き、シンプルなリアリズム肖像画の独特なスタイルで高い評価を得ていて、当時の前大統領夫人ミシェル・オバマ(Michelle Obama)の肖像画を描く画家として選ばれたことで一躍名声を得ているアメリカ人画家エイミー・シェラル(Amy Sherald、1973年8月30日-)など、現代の最も重要な肖像画家たちの中心的関心事となり、バリー独自のスタイルが継承されている。
これらの作品は、ラフや鎖帷子などの歴史的な儀式用衣服にストリートウェアやクチュールをミックスしたチューダー朝のイメージを取り入れた、バリーの最も独創的なスタイリングの先駆けでもある。この時期のスタイリングは、『Arena Homme+』(アリーナ・オム+)誌(2009年秋冬号)で英国人写真家でありフィルムメーカーであるジェイミー・モーガン(Jamie Morgan )が撮影して大きな反響を得た「Monarchy in the UK(モナキー・イン・ザ・UK」シリーズで見ることができる。