バリー・ケイマン (1963年9月22日~2015年10月3日)
バリー・ケイマンはビルマ系のイギリス人アーティストで、ファッション界での活動を基盤に、映画、音楽、ファインアートなど多面的な創作活動を展開している。
1985年、『ザ・フェイス』誌にバッファロー・アイコンとして紹介されたことをきっかけに、日本との長期にわたる親交が始まる。
東京に初めて滞在した直後から、川久保玲のもとで2シーズンにわたりスケッチやデザイン資料を制作するかたわら、モデルとしても活動し、1987年にはギャルソンでバスキアとともにランウェイを歩いた。
その直後、パリとロンドンでヘルムート・ラング、ジョン・ガリアーノ、ジャン=ポール・ゴルチエの初期コレクションに招かれ、コラボレーションを行った。
この数年間、彼はロンドンの先駆的で斬新なクリエイティブ・ライフにおいて重要な役割を果たした。 しかし、ファッション界でこのような素晴らしい創造性が発揮される一方で、彼のアーティストとしての活動も勢いを増し、成熟していった。
1989年、彼は初めて大作絵画の個展を開き、絶賛を浴びた。当初、彼の作品は表現主義的なスタイルと感触で、ニューヨークの抽象表現主義グループや、バリーが深い親近感を感じていたサイ・トゥオンブリーの心にしみるほど美しい抽象画に影響を受けていた。
絵画と並行して、彼の美学的アプローチは、エルトン・ジョン、ダイアナ・ロス、オアシス、エアロスミス、ローリング・ストーンズなど、当時の音楽界のアイコンの依頼で制作したアルバム・ジャケットやフィルムを通して、イギリスの大衆文化にも浸透していった。彼のユニークなビジュアル・スタイルは、英国音楽の時代を決定づけた多くの瞬間に不可欠な要素であった。
生涯を通じて自身のアート活動についてはほとんど口を開かなかったが、ギャラリーで作品を発表するようになり、ダミアン・ハーストやオノ・ヨーコのような偉大なアーティストを含む当時の重要なグループ展にも参加するようになった。
彼は芸術を通して、深い実存的、政治的な問いを投げかけることを恐れなかった。1990年代以降の彼の抽象絵画とその後の作品は、植民地支配の過去と偏見が根付いた英国において、人間であること、そして英国系ビルマ人であることの複雑な現実を探求するために、内面に潜り込んでいった。
彼は、ストリートやナイトクラブのスタイルから英国王室の伝統的な華やかさや儀式に至るまで、英国の美意識のさまざまな側面に植民地時代の遺産が絡み合っていることに魅了された。
そして、これらの異質な要素を引き出し、真に先見性のある作品を創り出す能力こそが、彼を際立たせているのである。
タイムライン
ビルマ移民の両親の8番目の子供としてエセックス州ハーローに生まれる。
セント・マークスRCコンプリヘンシブ・スクールを経て、ケンブリッジ・カレッジ・オブ・アートに入学。
バッファロー・ムーブメントの創始者、スタイリストのレイ・ペトリとフォトグラファーのジェイミー・モーガンに会う。バリーと弟のニック・ケイマンは、ナオミ・キャンベル、ネナ・チェリー、写真家のロジャー・チャリティ、マーク・ルボン、タリサ・ソトらとともにバッファロー一味のモデル、ミューズ、協力者となる。
1988年にガリアーノがパリに拠点を移す前、ジョン・ガリアーノとともにブランドを立ち上げる。
1月、レイ・ペトリのスタイリングによる『ザ・フェイス』誌のアイコン的存在に、弟のニック・ケイマンとともに登場。
ボディマップのクルーとコラボレーションし、彼らの伝説的なショー(NAME)でモデルを務める。
東京で過ごし、コム デ ギャルソンの川久保玲とのコラボレーションを開始。ジャン=ミシェル・バスキアとともにコム デ ギャルソンのキャットウォークショーを歩く。
ポンピドゥー・センターでの初コレクションを含む、ヘルムート・ラングのパリでの最初の4回のショーに参加。
また、ジャン=ポール・ゴルチエのパリでの最初のショーに参加。
ネナ・チェリーのシングル「Manchild」のミュージックビデオに出演。
パリのジャン=ポール・ゴルチエのアトリエで、アーティストとして初の大規模な個展を開催(展覧会タイトルは「Treasure」)。作品は好評を得た。この展覧会は多くのプレスの注目を集める。
UB40のヒット・アルバム「Labour of Love II」のアルバム・ジャケットをデザイン。
UB40のアルバム「Homely Girl」とニック・ケイマンのシングル4枚のアルバム・ジャケットをデザイン。
パリのギャラリー・ヴィヴィエンヌで個展「Treasure」を開催。
「Caged Waits」というタイトルで、初期の成熟した抽象的なキャンバスを制作。
ダイアナ・ロスのアルバム「The Force Behind the Power」のジャケット・デザインのためニューヨークへ渡る。
ロンドンのCウォールにて「History of England」シリーズを発表。
ロンドンのベアスペースで「Caged Waits」シリーズを展示。
彼の作品を購入するコレクターは以下の通り: ヘルムート・ラング、ジャン・バティスト・モンディーノ、タチアナ・パティッツなど。
「Books」シリーズをチェルシー・ライブラリー(ロンドン)にて発表。
ローリング・ストーンズの「Bridges to Babylon」ワールド・ツアーのバッキング・フィルム制作を依頼される。その他、エルトン・ジョン、ダイアナ・ロス、オアシス、エアロスミス、ピーター・ビアードなどのフィルムも手掛ける。
自身の左手のドローイングをもとに大小の作品を描く。
ロンドンのフィッツロイ・スクエア3番地で「and」シリーズを発表。
「Buffalo」(ロンドン、Westzone、2000年)の共同編集とデザインを手がける。
ロンドンの地下鉄ピカデリー線車内広告展「ARTTUBE 01(アート・チューブ01)」の一 環として、「SHOULD(シュッド)」のシリーズ作品を展示。他の出展アーティストには、 オノ・ヨーコ、ギャビン・ターク、ヴィヴィアン・ウエストウッド、ユルゲン・テラー、ダミアン・ハーストなど、現代アートとデザインの巨匠たちが名を連ねている。
ロンドンのレスター・スクエアで開催された権威あるポルスター・アート・プログラムの一環として、彼のアートフィルム「patRIOT」が展示される。
ニック・ケイマンのアルバム「Whatever Whenever」のジャケットをデザイン。
フリーランスのアート・ファッション・ディレクターとして、雑誌「PEN」(東京)のアート・ファッション・ディレクターを務める。(2007年まで)
「IS IS IT」のタイトルで、主要なポートレート・シリーズの制作を開始。このシリーズは2011年まで続く。
ピーター・ビアード(米国の代表的な写真家、環境保護活動家)のケニアの牧場に招かれる。この時期に紙を素材とした多くの作品を制作。
PUMAのコンサルタントとして働き始める(2015年まで)。
また、Arena Homme+誌(2009年秋冬号)で、ジェイミー・モーガンが撮影した歴史的ストーリー「Monarchy in the UK」シリーズのスタイルも手がける。
コラボレーター、ハリス・エリオットと出会う。
絆創膏をキャンバスに見立て、肖像画やその他のテーマで「Plaster」シリーズの制作を始める。
PUMAスタイリングチームの一員として、2012年ロンドンオリンピックのウサイン・ボルトとジャマイカチームのキットをデザイン。
長年のコラボレーターであるスタイリストのハリス・エリオットとともに、菊池武夫の2015年コレクションに参加(このショーのオリジナル作品の多くは、菊池武夫のアーカイブに残っている)
その後2015年、バリーはペインティング中にアトリエで亡くなる。
スタイリストとしての最後の作品『Boxer』(写真家ポール・ヴィッカリーとのコラボレーション)が、2016年にロンドンのExposure Galleryで死後展示される。
タチアナ・ストラウス・ケイマンがエグゼクティブ・ディレクターに就任し、バリー・ケイマン・エステートが設立される。
クリスティーズがバリー・ケイマンのキャンバスを初めて公開オークションに出品。また、クリスティーズマガジンで特集される。
Somerset House(「Missing Threads」)、V&A Dundee (Everything but the Clothes」)など、英国の主要施設で開催されたグループ展にバリーの作品が展示される。
Photo by Glen Erler
コラボレーター
主な顧客
CORPORATE CLIENT
(アルファベット順)- エアロスミスAerosmith
- コム・デ・ギャルソンCOMME des GARÇONS
- ダイアナ・ロスDiana Ross
- エルトン・ジョンElton John
- ライムライト・ピクチャーズLimelight Pictures
- マニック・ストリート・プリーチャーズManic Street Preachers
- ナタリー・コールNatalie Cole
- ネナ・チェリーNeneh Cherry
- ニック・ケイマンNick Kamen
- オアシスOASIS
- パッション・ピクチャーズPassion Pictures
- スティーブ・バロンSteve Barron
- ローリング・ストーンズThe Rolling Stones
- ザ・フェイスTheFace
- UB40UB40
- ヴォーグ(UK、イタリア、フランス)VOGUE UK,ITALIA,FRANCE
絵画と写真のコラボレーター
COLLABORATORS OF PAINTING AND PHOTOGRAPHY
(アルファベット順)- ハーブ・リッツHerb Ritts
- ジェイミー・モーガンJamie Morgan
- ジャン=バティスト・モンディーノJean-Baptiste Mondino
- ユルゲン・テラーJuergen Teller
- コト・ボロフォKoto Bolofo
- マーク・ルボンMark Lebon
コレクター
原画のコレクター
COLLECTORS OF ORIGINAL ARTWORK
(アルファベット順)- アズディン・アライアAzzedine Alaïa
- ダイアナ・ロスDiana Ross
- ゲイリー・ケンプGary Kemp
- ジョージナ・グッドマンGeorgina Goodman
- ヘルムート・ラングHelmut Lang
- ジャン・バティスト・モンディーノJean-Baptiste Mondino
- ジャン・ポール・ゴルチエJean-Paul GAULTIER
- ジョン・メイベリーJohn Mayberry
- ジョン・テイラーJohn Taylor
- ジョニー・サッポンJohnnie Sapong
- ジョニー・デップJohnny Depp
- ケイト・モスKate Moss
- リンダ・ベネットLinda Bennet
- 須磨光雄Mitsuo Suma
- ナオミ・キャンベルNaomi Campbell
- ネナ・チェリーNeneh Cherry
- リファット・オズベックRifat Ozbek
- ロバート・エルムズRobert Elms
- スティーブ・バロンSteve Barron
- 菊池武夫Takeo Kikuchi
Plaster pattern image, source: https://www.barryboyart.com/